成人の下顎前突2(マウスピース型カスタムメイド矯正装置「インビザライン」、非抜歯)
初診時正面
初診時上顎
初診時下顎
成人女性の患者様。受け口と上下顎前歯の凸凹を気にされての来院でした。前歯部は左側中切歯を除いて反対咬合になっていますが骨格的に上下顎の前後関係は標準的であり、前歯の傾きが原因の歯性の反対咬合です。
叢生の程度が軽度で、また口元に突出感も認められなかったため非抜歯で治療をすることにしました。装置はマウスピース型カスタムメイド矯正装置「インビザライン」です。
2008年頃だったと記憶していますが、インビザラインがTV番組で紹介されたことがありました。その直後はインビザラインを希望される患者様が一時的に増えました。その当時ほどではないにせよ今でも矯正装置としてインビザラインなどのマウスピースタイプの矯正装置を指定されて来院される患者様も多いのですが、矯正治療において先に「矯正装置」を決定してしまうのは順序が逆だなと考えてしまいます。
旅行で例えるならば矯正治療のゴール目標は「旅行先」、使用する矯正装置は「乗り物」です。最初に移動手段を「車」に決めてしまうと海外には行けません。インビザラインはどのような症状でも唇側矯正装置や舌側矯正装置などの固定式の矯正装置と同じような治療効果を得られるわけではないので最初にインビザラインで治療を行う、と決めてしまうと治療方針の決定に大きな影響を及ぼすしてしまいます。
癌の治療でも同じです。まずは症状を考えて、完治するにはどのような治療方が望ましいかを決定するのが順序なのに、最初から「薬物療法で治療してください」というのは少し違いますね。必要なら外科手術も選択しなければならないでしょう。
治療開始8ヵ月正面
治療開始8ヵ月上顎
治療開始8か月下顎
治療開始8か月目の口腔内写真です。上顎の前歯と下顎の前歯が重なっている状態です(切端咬合)。上顎の前歯や下顎の小臼歯の唇側面に付いている小さな出っ張りはインビザラインで治療を行う際に付加するアタッチメントというものです。物を動かすときには取っ手があったほうが便利ですが、アタッチメントはインビザラインにとっての取っ手のようなものです。
終了時正面
終了時上顎
終了時下顎
治療終了時口腔内写真。反対咬合と叢生が改善しました。治療期間は15か月でした。本症例のように叢生が比較的経度、非抜歯で治療が可能で大臼歯の後方移動の必要がなく、予想される治療期間が1年半前後の症状はインビザラインに最も適した症状といえると思います。
治療の目安
- 主訴
- 受け口、上下顎前歯の凸凹
- 診断名
- 上下顎前歯部叢生を伴う歯性の反対咬合
- 年齢
- 52歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン)
- 抜歯部位
- 非抜歯
- 治療期間
- 15か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約870,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
- リテーナー(保定装置)を適切に使用しない場合は、後戻りすることがあります。
【マウスピース型カスタムメイド矯正装置「インビザライン」について】
- マウスピース型矯正装置「インビザライン」は、日本国内では医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けていない未承認の医療機器です。材料については日本の薬事認証を得ております。
- 米アライン・テクノロジー社の製品の商標であり、インビザライン・ジャパン社から入手しています。
- 日本国内において医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けている同様の医療機器は複数存在します。
- 1998年にFDA(米国食品医薬品局)により、医療機器として認証を受けています。
- 日本では完成物薬機法未承認の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
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