成人の叢生4(舌側矯正装置、抜歯)
初診時正面
初診時上顎
初診時下顎
成人女性の患者様。上下顎前歯の凸凹と口唇の突出感を気にされての来院でした。上顎右側中切歯が捻転しています。また、上下顎前歯が接触しておらず、正面から隙間が見えます。このような症状を開咬といいます。叢生+開咬+上下顎前突症という症例です。
叢生は比較的軽度ですが、このような症例を抜歯をせずに治療を行うと、上下顎前歯の唇側傾斜により口唇の突出感の悪化、開咬の悪化という結果を招きやすくなります。そのため上下顎両側の第一小臼歯を抜歯し、叢生の改善と共に口唇の突出感の改善をはかることにしました。
患者様の仕事柄、唇側矯正装置の装着がNGだったため舌側矯正装置を選択しました。
治療開始5ヵ月正面
治療開始5ヵ月上顎
治療開始5ヵ月下顎
治療開始5か月目の口腔内写真。前歯の凸凹はほぼ無くなりました。上顎の口蓋を横切るように装着している装置はトランスパラタルバーといって、大臼歯が手前に動くのを防ぎ前歯を後退しやすくするための装置ですが、現在では同じ目的で歯科矯正用アンカースクリュー(ミニインプラント)を使用することが多くなりました。トランスパラタルバーは違和感が強く患者様に不評なことも多いです。また、固定源としてもアンカースクリューの方が優れています。矯正用アンカースクリューは手術に対する抵抗感はあるようですが、植立してしまえば違和感も少なくトランスパラタルバーに比べてメリットが多いように感じています。これから前歯を後退させて口元の突出感を改善する治療段階に入ります。
終了時正面
終了時上顎
終了時下顎
治療終了時口腔内写真。治療期間は17ヵ月でした。抜歯治療は平均すると2年前後治療期間がかかります。本症例は比較的短期間で治療が終了したといってよいでしょう。同じような症状でも実際に治療をしてみると予想より短期間で終了したり、逆に長引くこともあります。
医学的に明確な根拠はないのですが、治療が長引くケースの特徴として「口腔衛生状態が不良」なことが挙げられます。おそらく、口腔衛生状態が良くない患者様は良好な患者様と比較してご自身の口腔内への関心が薄いと推察されます。そのため定期的な来院だったり、顎間ゴムなどの患者様ご自身で使用していただく付加装置の使用時間に差が生じている可能性があると感じています。
治療の目安
- 主訴
- 上下顎前歯の凸凹と口唇の突出感
- 診断名
- 叢生(乱くい歯、でこぼこ)
- 年齢
- 成人女性
- 治療に用いた主な装置
- リンガルブラケット矯正装置
- 抜歯部位
- 上下顎両側の第一小臼歯
- 治療期間
- 17ヵ月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約1,360,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
- リテーナー(保定装置)を適切に使用しない場合は、後戻りすることがあります。
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