小児矯正治療例1(上顎第一大臼歯の近心傾斜のアップライト)
症状・治療方針
傾斜した歯を垂直に起こすことをアップライトといいます。日本語でいえば整直化となるでしょうか。この症例は上顎両側第一大臼歯が手前に傾いて萌出してきたために上顎の両側第二乳臼歯に引っかかって口腔内に半分しか萌出できていない状況を改善した症例です(写真の黄色い丸のところ)。
大臼歯が手前に傾いていると、小臼歯の萌出スペースを阻害します。また、本症例の場合には第二乳臼歯に引っかかって第一大臼歯の手前の部分が埋もれています。このため、歯磨きで届かない部位が生じるためとても虫歯になりやすい状況です。
1・小臼歯の萌出スペースを確保する
2・虫歯になるリスクの軽減
この2つの目的のために第一期治療を行うことにしました。
治療
上顎両第二乳臼歯間にリンガルアーチを装着し、部分的に唇側矯正装置を併用することで上顎左右側第一大臼歯のアップライトをはかりました。
治療期間
治療期間は6か月間でした。リーウェイスペースから計算して上顎の犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯の萌出スペースは確保されていると判断できますので当面は経過観察を行います。
永久歯列期に第二期治療の必要性も含めて再診断を行う予定です。
治療前のレントゲン写真
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治療後のレントゲン写真
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治療の目安
- 主訴
- 大臼歯が小臼歯の萌出スペースを阻害している
- 診断名
- 大臼歯による小臼歯の萌出阻害
- 年齢
- 7歳 男性
- 治療に用いた主な装置
- リンガルアーチ、マルチブラケット装置
- 抜歯部位
- 非抜歯
- 治療期間
- 6か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 第一期矯正治療 約390,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 着脱可能な装置を使用する際は、適切な装着時間を守らないと歯が動かず、治療期間も延長します。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
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