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子供の受け口(反対咬合・下顎前突)の治療と治療費の目安
ここでは典型的なケースを取り上げて、予測される矯正治療方法、矯正治療期間、矯正治療費用の概略を説明します。患者様の症状に近い写真を探して参考にしてください。
子供の受け口の最適な治療時期
年齢層:3歳~小学校低学年
骨格に原因がある受け口の治療は、早期であればあるほど効果的です
このような歯並びなら要注意です!
上記の写真のどれも上の前歯よりも下の前歯が前にあります。受け口は反対咬合、下顎前突とも言われます。歯に原因が限局される場合と、骨格的な問題を抱えている場合があります。咀嚼機能が低いだけでなく、受け口特有の顔貌や発音障害(サ行、タ行)などの問題もあります。
不正咬合の中でも特に早期治療が望ましい症状です。
子供の受け口(反対咬合・下顎前突)の歯列矯正治療開始時期に関する基本的な考え方
1・永久歯の前歯が受け口になっている場合
永久歯が受け口になっている場合には自然治癒を望めないのでなるべく早く矯正治療する、というのが基本的な考え方です。上顎の成長発育は小学校低学年~中学年(7,8,9才)にピークを迎え、その後、思春期に下顎の成長発育のピークが訪れます。受け口というのは、上顎の前歯が下顎の前歯の内側にありますから、受け口という状態そのものが上顎の発育を阻害する要因になります。このため、上顎の成長発育のピークである小学校低学年以前に矯正治療するのが望ましいのです。
2・乳歯列期
乳歯列期の受け口の治療開始時期はその原因によって分かれます。受け口は前歯の傾きによる「歯性の反対咬合」と、顎の大きさに問題がある「骨格性の反対咬合」に分類することができます。
このうち「歯性の反対咬合」は前歯が永久歯に生え代わる際に自然治癒する可能性があるので前歯が永久歯に交換するまで経過観察を行います。「骨格性の反対咬合」については自然治癒が見込めないので早期に治療を開始することが望ましいといえます。
歯性の受け口か、骨格性の受け口かを正確に判定するためにはレントゲンを撮影して上顎と下顎の大きさを計測する必要があるのですが、ここではご家庭で簡易的に判別する方法を紹介したいと思います(あくまで目安程度の鑑別法であることをご理解ください)。
乳歯列期の反対咬合が骨格的なものであるか否かを口腔内の視診で判定するには、上下乳犬歯の前後的咬合関係と上下顎第二乳臼歯後縁の垂直的位置関係(ターミナルプレーンといいます)を参考にします。
最初にターミナルプレーンから説明します。
上図は左から乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯が描かれています(出典:矯正歯科学第5版 医歯薬出版)。
上下顎の第二乳臼歯の後縁が垂直な関係にある場合を垂直型、下顎が上顎よりも前方にある場合を近心階段型、上顎が下顎よりも前方にある場合を遠心階段型といいます。
垂直型は将来的に上下顎の大臼歯関係が正常になる可能性が高く、近心階段型は下顎前突傾向、遠心階段型は上顎前突傾向を有しています。
正常な上下顎乳犬歯、および第二乳臼歯の前後的咬合関係
上顎乳犬歯が下顎乳犬歯の外側に位置し、ターミナルプレーンは垂直型です。もし、前歯部が受け口であっても乳犬歯とターミナルプレーンがこの写真と同様であれば歯性の反対咬合であると判断できます。
骨格性の受け口の上下顎乳犬歯、第二乳臼歯の前後的咬合関係
下顎犬歯が上顎犬歯の外側に位置し、ターミナルプレーンも近心階段型になっています。このような症状の場合、骨格的な下顎前突症とみてほぼ間違いありません。乳歯列期からの治療が望ましい症状といえます。
子供の受け口(反対咬合・下顎前突)の歯列矯正治療の目的
歯のねじれや、隙間といった、個々の歯の位置異常の場合、通常、乳歯の歯並びを矯正治療する必要はありません。ところが不正咬合の原因が歯の位置の異常ではなく、上顎と下顎の大きさのバランスがとれていない、という骨格的な要因による場合には早期の歯列矯正治療が必要です。
受け口の患者様の骨格的な特徴として、上顎が小さく下顎が大きい、という傾向があります。このため、この年齢層における受け口の歯列矯正治療は上顎の成長促進、下顎の成長抑制を行い、上下顎骨の大きさのバランスを改善して、今後の正常な成長発育を促すことが歯列矯正治療の目的になります。
子供の受け口(反対咬合・下顎前突)に使用する代表的な歯列矯正治療装置
想定される歯列矯正治療期間、通院頻度
矯正治療期間:約1年半~2年前後、2~3ヶ月に一度の通院/保定 2年前後、3~4ヶ月に一度の通院
想定される歯列矯正治療費(自費)
検査・診断料金 | 27,500円(税込) |
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第一期の矯正治療基本料金 | 330,000円(税込) |
治療毎の矯正処置料金 | 5,500円(税込) |
第一期の矯正治療費用合計 | 約390,000円(税込) |
- 注1上記は子供の受け口の歯列矯正治療に現在最も一般的に使用されている上顎前方牽引装置を用いた場合を想定しています。
- 注2この場合の第一期の矯正治療とは主に骨格的な改善を目的とした受け口の矯正治療のことです。
順調に矯正治療が進行するとここで第一期の矯正治療から定期観察期間に移行します。定期観察中は後戻りが生じていないか、永久歯の萌出に異常はないか、などを注意深く観察していきます(3~4ヶ月に1回の通院)
第二期矯正治療について
骨格的な受け口を治療しても、永久歯が生えてきたら八重歯だったというケースもあります。
その場合には、小学校高学年以降に八重歯を治療するための第二期の歯列矯正治療を行います。こちらは骨格的な改善を目的とするのではなく、個々の歯を正しい場所に位置づけるための歯列矯正治療となります。通常は唇側矯正という方法で行います(患者様のご希望によって舌側矯正などでの治療も可能です)。第二期矯正治療は必ず行うものではなく、永久歯萌出後、必要に応じて矯正治療をおこなうかどうかを改めて考える性質のものです。
第二期矯正治療を行う場合の基本料金の目安(自費)
第二期の矯正治療基本料金 | 330,000円(税込) |
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治療毎の矯正処置料金 | 5,500円(税込) |
第二期の矯正治療費用合計 | 約440,000円(税込) |
- 注1 第二期の矯正治療基本料金は、大人の矯正治療費 660,000円-第一期分でお支払いになられた矯正治療基本料金 330,000円という計算で算出されます。
- 注2 この場合の第二期の矯正治療とは主に歯のねじれや重なりといった、個々の歯の位置異常を改善し、機能的、審美的な美しい歯並びを獲得することを目的とした矯正治療のことです。
治療の目安
- 治療内容
- 矯正装置を通じて歯やアゴの骨に力をかけてゆっくりと動かし、歯並びと噛み合わせを治します。
- 治療期間・回数
- 矯正 1年半~2年前後・1回/2~3か月 保定 2年前後・1回/3~4ヶ月
- 一般的な治療費総額の目安(自費)
- 約870,000円(税込)
- リスク、副作用
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- 歯みがきが不完全なまま長時間マウスピースを装着すると虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めてマウスピースを装着した時や取りかえた後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 小児や骨格性要因を含む症例には適さず、精密な歯の移動は原則として困難で満足な結果が得られない場合があります。
- 適切な装着時間を守らないと歯が動かず、治療期間も延長します。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
- リテーナー(保定装置)を適切に使用しない場合は、後戻りすることがあります。
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