叢生治療例5(唇側矯正装置、抜歯)
初診時口腔内写真
上下顎ともに重度の叢生です。下顎前歯歯頸部に黄色い付着物が認められますが、これはプラーク(歯垢)です。このような歯並びですと歯磨きが相当難しいと思いますし、プラークの蓄積は口臭の原因にもなります。当然、虫歯、歯周病のリスクも非常に高いです。
また、虫歯や歯周病に罹患した際の歯科治療も困難を極めることが容易に想像できます。このケースでは幸いに今のところ虫歯も少なく、矯正治療も比較的容易でした。
上顎左側側切歯が舌側転位しており、かつ犬歯が頬側から萌出してきたために乳犬歯が側切歯と犬歯の間に残存しています。このような例は稀です。通常は犬歯、ないし側切歯の萌出に伴い脱落することがほとんどです。
これほど重度の叢生ですと仮に非抜歯で治療すると口唇の突出感が顕著に悪化しますので、上下顎両側の第一小臼歯を抜歯して治療することにしました。使用装置は唇側矯正装置です。
治療途中口腔内写真
(治療開始5ヵ月後)
治療途中の口腔内写真です。凸凹が残っています。矯正治療では多くの場合、まず凸凹を解消することから治療をスタートします。この治療段階のことを歯列の標準化(レべリング)といいます。抜歯症例の場合には抜歯スペースに凸凹を寄せていきますし、非抜歯症例の場合には主に歯列を拡大することで凸凹を解消するために必要なスペースを獲得します。上の写真では上顎左側側切歯の配列スペースを獲得するために上顎左側中切歯と犬歯の間にオープンコイル(矯正用のバネです。縮めて使用することで隣在歯が開くように動きます)を使用しています。
治療終了時口腔内写真
(治療開始19ヵ月後)
治療終了時です。治療期間は19ヵ月間でした。まだ十分とは言えませんが治療前に比べて歯肉の腫脹も軽減されています。歯周病に罹患するリスクも減少しました。このように矯正治療には予防歯科としての側面もあります。
治療の目安
- 主訴
- 歯のデコボコ(叢生)を治したい
- 診断名
- 叢生
- 年齢
- 17歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- マルチブラケット装置
- 抜歯部位
- 上下顎両側第一小臼歯
- 治療期間
- 19ヵ月間 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約820,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
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