上顎前突治療例9(上顎両側第一小臼歯抜歯、唇側の矯正装置)
症状・治療方針・治療
初診時年齢:16歳
性別:女性
症状・治療方針
上顎左側中切歯の唇側傾斜を認めました。下顎前歯が廷出しており(スピーの湾曲が強い)、過蓋咬合(咬み合せが深いこと)を呈していました。また、大臼歯関係はAngleⅡ級でした(下顎第一大臼歯が上顎第一大臼歯に対して相対的に半咬頭以上後方にありました。これは、本症例が前歯の傾きだけの問題ではなく、上顎歯列全体として下顎歯列に対して前方位にあることを示しています≒骨格性の上顎前突症)。
治療方針:上顎両側第一小臼歯を抜歯し、その抜歯スペースを利用して上顎前歯部叢生の改善と上顎前歯の後方移動を行うことにしました。
治療器具:マルチブラケット装置(メタルブラケット)
治療経過
1・抜歯後、上下顎に唇側の矯正装置を装着しニッケルチタンワイヤーにて歯列の標準化を開始
2・2か月後、ステンレススチールワイヤー(ラウンド)を使用し犬歯の後方誘導を開始
3・9か月後、ステンレススチールワイヤー(スクエア)を使用し前歯の後方誘導を開始。同時に上顎犬歯~下顎第一大臼歯間に顎間ゴム(Ⅱ級ゴム)を併用
4・17か月後、ステンレススチールワイヤー(スクエア)を使用し最終の微調整を3か月間行った
5・20か月後、唇側の矯正装置を撤去し保定装置を装着
治療期間:1年8か月
コメント
このケースは患者様の顎間ゴムの使用状況がとても良好でした。顎間ゴムは食事の毎に取り外したりと案外面倒なものですが矯正治療においてはとても大切な補助装置ですので頑張って使いましょう(使用しないこともあります)。
また、治療中の写真ではピンクのカラーゴムを使用しています。赤、青、黄、など20種類くらいのカラーゴムがあります。ピンクと水色を交互にするのが一番人気があるかな?
治療の目安
- 主訴
- 上顎のデコボコの歯並び、噛み合わせが深い
- 診断名
- 上顎前突
- 年齢
- 16歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- マルチブラケット装置
- 抜歯部位
- 上顎両側第一大臼歯
- 治療期間
- 1年8か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約830,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
- 治療費は本症例治療時に実際にかかった費用になりますのでご了承ください。
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