叢生治療例11(舌側矯正装置(ハーフリンガル)、抜歯)
主訴と症状
主訴は歯のでこぼこを治したい。また、上顎を舌側矯正装置(歯の裏側に装着する矯正装置です)での治療をご希望でした。
上顎左側側切歯が舌側転位しています。このようなケースでは上顎左側側切歯と下顎左側側切歯が干渉するために、本来の顎の位置よりも前方で咬合する“前咬み”のような状況になることがしばしばあります。この症例でも顎の位置を確認してから抜歯部位を決定するために(抜歯することは決めているのですが、抜歯部位を確定するために)当初は抜歯をせずに上顎から治療を開始しました。
治療
半年後、上顎左側側切歯が唇側傾斜し、下顎左側側切歯との干渉がなくなった状態で再診断し、上下両側第一小臼歯の抜歯+矯正用アンカースクリューの使用を決定しました。
上段中央の写真が矯正用アンカースクリューを口蓋正中に2本植立し、上顎前歯をアンカースクリューを固定源として後方牽引しているところです。アンカースクリューにフック付きのワイヤーを結び付けています。今は既製品が販売されていますが、治療当時(3年くらい前)は自作するしかありませんでした。下顎にはホワイトワイヤーを使用しています。
治療結果
口蓋正中にアンカースクリュー除去後の痕が残っていますが、これは数日で消えます。アンカースクリューの撤去の際は麻酔をしません(してもいいのですが、痛くないのでしたことがありません)。
治療期間が2年3か月と若干長めでしたが良い結果が得られました。
口蓋正中へのアンカースクリュー植立は最近ではルーティーンのようにおこなうようになりましたが、この症例の頃はそれほど手がけていたわけではありませんでした。しかし、この症例をみて改めてアンカースクリューの有用性を実感しました。
治療の目安
- 主訴
- 歯のでこぼこ
- 診断名
- 叢生
- 年齢
- 23歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- リンガルブラケット矯正装置、マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
- 抜歯部位
- 上下顎両側第一小臼歯
- 治療期間
- 2年3か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 1,260,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- また、治療当初は装置が舌にあたり、発音のしづらさや食べづらさなど感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
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