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矯正歯科で処方する抗生物質(セフカペンピボキシル塩酸塩錠)
先発薬はフロモックス(塩野義製薬)。セフカペンピボキシル塩酸塩錠というのはジェネリック薬品になります。セフェム系の第三世代抗生物質。
矯正歯科医院で抗生物質を処方することは少ないのですが、主に歯科矯正用アンカースクリューを植立したときに処方します。それ以外の外科処置をすることは少ないです。たまに炭酸ガスレーザーで歯肉弁切除をすることもありますけど、抗生物質を処方することはあまりないです。
用法
1日3回8時間毎、もしくは毎食後に服用してください
一定以上の血中濃度を維持した時間に依存して効果を発揮します。ですから等間隔で服用していただくことが大切です。1日分3錠を1回で服用すれば血中濃度は上がりますが、このお薬は血中濃度を上げても意味がありません。
抗生物質には濃度依存型と時間依存型のタイプがあります。極端に言えば濃度依存型は濃度を上げれば上げるほど効き目が良くなる抗生物質で、時間依存型はある濃度を超えるとそれ以上濃度を上げても効き目に変わりはなく、ある血中濃度を超えた時間が長いほど効き目が良くなる抗生物質です。フロモックスは時間依存型です。
8時間毎か毎食後についてはそれほどこだわる必要はありません。毎食後が良い理由は食後の方が本剤の吸収率が良いからです。ただ、1日3食といっても摂食時間は個人差がありますし、血中濃度の維持が本剤の要諦ですから、そういう意味で個人差の大きい摂食時間に左右される毎食後、よりは8時間毎のほうが優れているのではないかと思っています。
細菌の細胞壁合成を阻害することで細菌の増殖を抑えます(細胞分裂ができなくなります)。なお、人間の細胞には細胞壁が存在しないので人間の細胞には作用しません。このため、細菌に選択的に作用させることが可能で安全性が高い抗生物質です。関連で細胞壁を持たないウイルスにも効果はありません。風邪の80%がウイルス原因といわれていますので、ほとんどの風邪に抗生物質は本質的には無効です。風邪に抗生物質を処方するのは細菌による2次感染を予防するのが目的です。なお、ウイルス全般に効く薬剤を開発したらノーベル賞ものだといわれているくらいで、今現在、風邪の特効薬はありません。風邪の治療は、抗生物質による2次感染予防と解熱消炎鎮痛剤による対処療法が主で、根本のウイルス対応は人間の持つ免疫反応に依存しています。
効能
細菌の増殖を抑えるお薬です
セフェム第三世代抗生物質。私(1970年生まれ)くらいの世代だと、歯科で有名なセフェム系抗生物質はケフラール(セフェム第一世代)。今でも処方している先生もいますが耐性菌が多くあまり効かないといわれています。
抗生物質の中では安全性の高いお薬です。妊娠中、授乳中も適用可です。避けるに越したことはありませんが。
ほとんどすべて抗生物質の副作用の大部分を占めるのが胃腸障害、特に下痢です。下痢の発現率は大雑把にいってフロモックス3%、ジスロマック(アジスロマイシン)15%です。
抗生物質について
抗生物質は必ず、処方された全量を時間を守ってお飲みください。
*抗生物質は歴史上、耐性菌との闘いでもあります。今現在有効な抗生物質も10年後も同じく有効であるとは限りません。その理由が耐性菌の出現です(ほぼ全ての抗生物質に耐性を獲得した黄色ブドウ球菌をMRSAといいます。MRSAは健常者にとっては特に有害ではありませんが、体力が弱っているとあらゆる抗生物質が効かないので問題となります)。では、いつ耐性菌が出現するか?というと抗生物質が細菌を完全に死滅させるでもない、中途半端な血中濃度で存在する間に出現すると考えられています。ダラダラ飲むくらいなら飲まないほうがいいとも言えます。耐性菌を作らないという意味においても抗生物質は必ず処方量すべてをお飲みください。
*ただし、体調が悪くなるなどの症状が出現した際には直ちに服用を中止しご連絡ください。
MRSAとはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)の略。世界で最初に作られた抗生物質がペニシリン。世界中で頻用されたのでペニシリンに耐性を持つ細菌が出現した。そのペニシリン耐性を獲得した細菌に有効だったのがメチシリンというペニシリン系の抗生物質。そのメチシリンに耐性を獲得したのがMRSA。MRSAに有効なのがバンコマイシンという抗生物質。そのバンコマイシンにも耐性を獲得したのがVRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)。ちなみにMRSAは日本のほとんどの病院に根深く住み着いているそうです。