成人の叢生(唇側矯正装置、非抜歯)
初診時正面
初診時上顎
初診時下顎
成人男性の患者様。上下顎の歯の凸凹(叢生)を気にされての来院です。
凸凹は上顎5mm、下顎4mmです。矯正治療における抜歯・非抜歯の決定は単純に凸凹の量から判断されるわけではなく、口唇の突出感が許容範囲に収まるか否か、など様々な要素を加味して決定されますが、凸凹の量だけを判断材料とした教科書的な一応の目安はあります(抜歯基準)。
凸凹の量が4mm以下
通常抜歯は推奨されない。抜歯をするのは、軟組織(E-lineに対する上下口唇の位置関係や口唇閉鎖時にオトガイ筋の緊張が認められるかどうか、鼻唇角が小さいかなど)の状態から判断して抜歯をした方が審美的に良好な結果を得られると判断した場合。
凸凹の量が5~9mm
抜歯、非抜歯いずれによる治療も可能。抜歯をするか否かは軟組織の状況から判断する(非抜歯の場合の軟組織の変化と抜歯による軟組織の変化を比較検討する)。
凸凹の量が10mm以上
通常、抜歯をすることが推奨される。
というものです。矯正歯科を志す歯科医師にとってのバイブル的存在といってもよい「プロフィトの現代矯正歯科学」という書籍 からの抜粋で、概ねこの判断基準を基に治療計画を立案することになります。
ただ、欧米人と日本人では鼻の高さや頤部の発達度合いが異なるので日本人の場合はどうしても口唇の突出感が欧米人に比べると顕著に顕れやすくなるため抜歯治療を選択することが多くなることは確かです。
本症例では上記基準に則り凸凹の程度から非抜歯での治療を行ないました。装置は唇側矯正装置(セラミックブラケット)。ワイヤーはホワイトワイヤーです。通常のワイヤーに樹脂でコーティングして審美性を高めています。治療期間は1年1ヵ月でした。
治療開始7ヵ月正面
治療開始7ヵ月上顎
治療開始7ヵ月下顎
治療開始7ヶ月目の口腔内写真。この時点では下顎には装置を付けていません。
終了時正面
終了時上顎
終了時下顎
下顎に装置を付けていたのは5か月間でした。
治療の目安
- 主訴
- 上下の歯の凸凹
- 診断名
- 叢生
- 年齢
- 26歳 男性
- 治療に用いた主な装置
- マルチブラケット装置(ホワイトワイヤー)
- 抜歯部位
- 非抜歯
- 治療期間
- 1年1か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約900,000円(税込)
- リスクと副作用
-
- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
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