下顎前突の治療例10(下顎右側第一小臼歯抜歯)
症状・治療方針・治療
初診時年齢:19歳
性別:男性
主訴:受け口、前歯で物が咬みきれない
症状・治療方針
下顎前突、開咬の合併症です。上顎歯列正中に対して下顎歯列正中が左側偏位しており、顔貌所見でも僅かに下顎骨の左偏が認められました。
当院に来院される前にも数軒の矯正歯科医院で初診相談を受けたそうです。いずれも外科手術を併用した矯正治療を強く勧められたとのことでしたが、特にお母様が外科手術に対して抵抗感を感じての来院でした。
当院においても第一選択は外科矯正であろうということは説明しましたが、手術に対する抵抗感を払拭することはできず第二の選択肢として矯正治療単独での治療を行うこととしました。
本症例のように外科矯正が第一選択となるような症例を矯正単独で治療する場合、治療の難易度は高くなることが多いです。本症例においても外科矯正症例として考えれば難易度は低いですが、矯正治療単独症例として考えると治療難易度は高いです。
下顎前歯を後方移動するためと、下顎歯列正中を右に動かして上顎歯列正中と一致させるために下顎右側第一小臼歯を抜歯することにしました。
治療中の写真は下顎歯列の幅径を拡げるために1㎜のワイヤーをメインアーチに併用しています。片顎抜歯(代表的には上顎前突の際の上顎抜歯、下顎前突の際の下顎抜歯)の場合、抜歯した歯列幅径が対合歯列に対して小さくなる傾向が強いのでこのような方法で歯列幅径の調節をすることがあります。
治療について
治療後の下顎歯列が左右非対称に見えるのは片側抜歯のためです。正面から見ると上下顎歯列の正中は一致しています。臼歯部の咬合状態も良好です。非常に良い治療結果を得られたと考えています。
注意点としては本症例のように顎の左右のゆがみを伴う症例を矯正治療単独で治療した場合、顎のゆがみは改善しません。顎のゆがみの改善には外科手術が必要になりますので、ご自身が改善したいのはどういう点なのかを治療前に担当医とご相談のうえ治療方針の選択をしていただきますようお願いいたします。
治療の目安
- 主訴
- 受け口、前歯で咬めない
- 診断名
- 開咬を伴う下顎前突症
- 年齢
- 19歳 男性
- 治療に用いた主な装置
- 唇側矯正装置
- 抜歯部位
- 下顎右側第一小臼歯
- 治療期間
- 30か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約880,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- また、治療当初は装置が舌にあたり、発音のしづらさや食べづらさなど感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
- 矯正治療は患者様の協力度に左右されることのある治療です。顎間ゴムなどを歯科医師の指示通りに使用しないと期待した治療結果が得られないことがあります。