叢生治療例7(舌側矯正装置、抜歯)
初診時口腔内写真
右上の八重歯を気にされての来院でした。スペースの不足量は上顎7mm、下顎4mm。奥歯の咬み合せも下顎大臼歯に対して上顎大臼歯が相対的に前方位にあったため、上顎は両側の第一小臼歯、下顎は両側の第二小臼歯を抜歯しました。
第一小臼歯を抜歯すると抜歯部位より前に位置するのは中切歯、側切歯、犬歯の3本、後方に位置するのは第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯の3本になります。対して第二小臼歯を抜歯すると抜歯部位より前に位置するのは中切歯、側切歯、犬歯、第二小臼歯の4本、後方に位置するのは第一大臼歯、第二大臼歯の2本になります。
このように上下顎の抜歯部位を非対称とすることで相対的に上顎大臼歯よりも下顎大臼歯を手前に移動することが容易になり、奥歯の咬み合せの前後関係改善が容易になります。第一小臼歯と第二小臼歯は形態がほぼ同じで、どちらを抜歯しても咬み合せに影響することは無いので矯正治療においては治療上、より有利と考えられる方を抜歯することになります。
治療途中口腔内写真
治療中の写真です。上下顎ともに抜歯空隙を閉鎖している段階です。上顎にはワイヤーをL字型に屈曲していますがこれをループといいます。ループを広げると元に戻ろうとする力が作用して歯列内の空隙を閉鎖します。上顎の小臼歯から大臼歯にかけて見える青い物は咬み合わせを拳上するためのセメントです。舌側矯正では比較的良く行われる処置で、下顎の前歯が上顎の前歯のブラケットと当らないようにして、空隙閉鎖がスムーズに進行するようにしています。
治療終了時口腔内写真
治療終了時です。最終段階で歯科矯正用アンカースクリュー(マイクロインプラント)を口蓋正中部に植立したため撤去した跡が残っていますが数日で塞がります。
治療の目安
- 主訴
- 右上の八重歯
- 診断名
- 叢生
- 年齢
- 15歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- リンガルブラケット矯正装置、歯科矯正用アンカースクリュー
- 抜歯部位
- 上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯
- 治療期間
- 2年2か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約1,330,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、丁寧な歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- また、治療当初は装置が舌にあたり、発音のしづらさや食べづらさなど感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
- 歯科矯正用アンカースクリューは脱落することがあります。
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