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歯科技工用溶接ろう付け器(スポットウェルダー)
スポットウェルダーはバンドにブラケットを溶接する際に使用する器械です。バンドとはブラケットを歯に装着するための装置の一つで、歯の周りを薄い金属板で囲んだものです。下の写真の真ん中の歯(第一大臼歯)にバンドが装着されています。
かつて矯正治療では前歯部含め全ての歯にバンドをしていました。審美性は悪いですが、歯質接着性を有する接着剤が無かったのでそうするしかなかったのです。
歯質接着性を有する接着剤が開発されたことでバンドは徐々に姿を消して現在のダイレクトボンディング(歯に直接ブラケットを接着する方法)に移行してきました。
ただ、ダイレクトボンディングは天然歯においては強固な接着強度を有していますが、補綴物(金属やセラミックなど)に対する接着強度は弱くなります。そのために現在でも臼歯部を中心にバンドによるブラケット装着は行われています。
歯科医師によっては臼歯部は必ずバンドで賄うことも少なくありません。ダイレクトボンディングは矯正治療を行うにあたり必要十分な接着強度を有していますが、どちらがより強固な接着強度かといえばやはりバンドということになるでしょう。そこで、臼歯部など、咀嚼時にかかる咬合力が大きい部位はバンドを使用するという考え方です。ただ、矯正治療後にバンド分のスペースが残存するなど(通常は自然と閉鎖します)、デメリットも存在しますので当院では天然歯に対しては臼歯部であっても第一選択としてはダイレクトボンディングとしています。
余談ですが、矯正業界で前歯部のバンドをほぼ誰も行わなくなったにも拘らず、前歯部まで全てバンドでブラケットを装着することがごく一部の大学病院で行われていました。1995年前後のことです。その大学病院に所属する歯科医師全員ではなく、1,2年目の研修医だけの課題です。教育目的ということなのでしょうが、誰も使わなくなった前歯部のバンドなど製造しても売れるわけがありません。なので大学病院相手とはいえ製造メーカーがさすがに悲鳴を上げて「もうやめてください」と訴えたそうです。それが理由かどうか定かではありませんがほどなくしてその大学病院もフルバンドをやめました。傍から見ていても「研修医へのシゴキ」感満載でしたから当然と言えば当然でしょう。なにより患者様の利益に全くなりませんし。
デンツプライ「三金SS-100」
写真のスポットウェルダーはデンツプライ三金のSS-100という製品です。この製品、私が歯科医師になってから20年もの間、新型が発売されていません。およそ複雑な器械ではないので、ある意味でこれがスポットウェルダーとしての完成形なのだと思います。
ただ、本体の左半分はワイヤーを熱処理するための機能が付いている部分なのですが、今時必要ないのでそろそろ左半分の機能を省いてもう少しコンパクトな新型を発売して欲しいと最近は思っています。
近藤テック株式会社「マイウェルダーKTH-MWDX」
先に紹介したスポットウェルダーはデンツプライサンキンという、歯科では比較的大きな会社の製品です。正確には三金工業が、歯科の大手デンツプライの一員になったという感じなのかもしれませんが、とにかく今では大手です。スポットウェルダー自体がさして複雑な機器でもなく、故障もほとんどしないため1度購入すれば一生物という状況もあってか、各メーカー一応品物はありますがほとんど改良しません。スポットウェルダーだけは進化の歩みを止めてしまったかのように、25年前と全く同一の製品を今でも新品で正規購入することができます。さて、そんな矯正業界の生きた化石(言い過ぎ)、スポットウェルダーに新参者が現れました。といっても20年前。コンパクトなので往診用に使っていたのですが、デンツプライサンキンのスポットウェルダーが場所をとるので現在はこちらを診療室に置いています。近藤テック株式会社の「マイウェルダーKTH-MWDX」という製品です。発売された当初は近藤製作所という会社が製造していたのでおそらく子会社化したのだと思います。近藤製作所というのは知らなかったので一体どんな企業なのかと思って検索してみたら意外や意外、結構大きな企業のようです。てっきり社長以下5人くらいの町工場が社運をかけて作った製品かと思っていましたが、よくよく考えてみればこんな滅多に売れない商品に社運をかけるわけがありませんね。何しろ歯科医師の2%程度しかいない矯正歯科医が一生に一回か二回しか買いませんから。使う側が機能向上を求めていないため改良すら行われません。家電で買い替え需要が少ないものといえば冷蔵庫だと思うのですが冷蔵庫でも一生に一回か二回ということはないでしょう。会社のホームページは実に堅実な感じで好印象です。このスポットウェルダーも実に堅実に出来ています。往診先で使用していたころは、旅行鞄に詰め込んで宅急便で送るのですが、そうすると旅行鞄は酷く傷みます。足のローラーの部分とかの壊れ具合を見れば宅配便が荷物を丁重に扱っていないのが本当によくわかるのですが、最初から覚悟しているので気にはなりません。それより感心するのは、より単純構造の旅行鞄が壊れるほどの衝撃を受けながら壊れない生きた化石、スポットウェルダーの頑強さです。しかもこのスポットウェルダーは無駄な部分もありません。・・・とてもいい製品だと思います・・・もう買わないと思うけど・・・壊れないし・・・。