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歯科矯正用プライヤー
ライトワイヤープライヤー
矯正を学ぶ歯科医師が一番最初に手にするのがこのライトワイヤープライヤーです。矯正治療には様々な種類のワイヤーが使用されますが、その中で主にマルチブラケット装置(唇側矯正装置や舌側矯正装置)に使用されるワイヤーを屈曲する際に使用します。ループを屈曲したり、トルクを組み込んだり、ほぼ全ての屈曲(ワイヤーベンディング)をこのワイヤーでおこないます。
なお、保定装置などに使用される0.9mm線などは形はほとんど同じですが、プライヤーの先端が変形しないように太めに作られておりこれはバードビークプライヤーといって区別しています。
ワイヤーをカットできるカッター付のものとカッター無しのタイプがあります。歯科大学病院勤務時はカッター付のものが多かったので、当初はそれに慣れていたのですが、いつの頃からかライトワイヤープライヤーのカッターを使うことがほとんどなくなったため今ではほぼすべてのライトワイヤープライヤーをカッター無しタイプで揃えています。
メーカーによって先端の細さに若干の差があって、一般的には細いほうがより細かくワイヤーを曲げることができるのですがその分変形しやすいと考えられますが、実際にはメーカーによりけりです。ダメなメーカーは太くてもすぐに変形するし、良いメーカーは細くてもあまり変形しません。
唇側矯正装置にせよ舌側矯正装置にせよ、以前はスタンダードエッジワイズといってインセット・オフセット(歯の厚みの補正)、アンギュレーション(歯の近遠心的傾きの補正)、トルク(歯の頬舌的傾きの補正)をワイヤーの屈曲で行っていたのですが、最近はストレートエッジワイズという、インセット・オフセット、アンギュレーション、トルクがブラケットに組み込まれたブラケットが主流になっているので以前に比べると使用頻度は減りましたがそれでも非常に重要なプライヤーであることに変わりはありません。
エンドカッター(セーフティーカットタイプ)
エンドカッターは主に一番奥の歯に付けたブラケットの後方部分でワイヤーをカットするためのプライヤーです。大きく分けるとセーフティーカットとフラッシュカットタイプの2種類があります。セーフティーカットタイプは切ったワイヤーをプライヤーで把持できるようになっていますが、構造上僅かに切り残しの部分が生じてしまいます。フラッシュカットタイプは切残しなくキッチリ切れますが、切ったワイヤーを把持できないため注意が必要です。
通常はセーフティーカットタイプを使用し、必要がある場合にのみフラッシュカットタイプを使用します。
エンドカッター(フラッシュカットタイプ)
こちらがフラッシュカットタイプのエンドカッター。見た目はほとんど変わりません。よくよく見れば違うのですが、区別が付きにくいので青色のバンドでマーキングしています。
それにしてもエンドカッターというのはメーカーによって切れ味が全然違います。一般的なニッケルチタンやステンレススチールのワイヤーの切れ味はさほど差がありませんが、舌側矯正で頻繁に使用するベータチタン(TMAとかCNAとかメーカーによって呼び方が違う)ワイヤーだとハッキリ差が出ます。切れないのは全く切れない。不思議なことに価格に比例しません。15000円程度のものがスパッと切れたかと思うと40000円もするエンドカッターが全く切れなかったりします。
ピンカッター
ピンカッターはパワーチェーンやリガチャーワイヤー、小林フックを切るためのプライヤーです。ライトワイヤープライヤー、ピンカッター、エンドカッター、ユーティリティープライヤー、ホウプライヤーあたりが最も使用頻度の高いプライヤーですがその内の一つです。
刃物だけにどうしても傷むのが早く砥ぎに出すのですが、それでも2,3回砥ぎに出すと先端が丸まってきて使えなくなってしまいます。
もう少し傷まない素材はないものでしょうか。
アーチターレット
アーチターレットとは歯科矯正用のワイヤーを前歯部の曲面に合わせて屈曲するための道具です。
最近ではプリフォームといって予め屈曲されたものが市販されていますからあまり使用することはなくなりました。 左の写真がアーチターレット本体です。溝が5本掘ってあって、ワイヤーをどの溝に入れて屈曲するかでトルク値が変化します。0°の溝に挿入して屈曲すれば平たい運動場のランニングコースのような形態になりますし、角度の付いた溝に挿入して屈曲すれば競輪場のバンクのような形態になります。
右の写真の内側が市販のプリフォームワイヤーで外側が30cm位の直線ワイヤーをアーチターレットを使用して屈曲したものです。 長さが全然違います。これが現在でもアーチターレットが必要な理由です。
矯正治療では様々にワイヤーを屈曲して使用するのですが、市販のプリフォームワイヤーだと長さが足りないため単純な形態のループを2個しか曲げることができません。複雑なループを屈曲したい、あるいは3個以上ループを屈曲したい場合にアーチターレットを使用して足の長いワイヤーを作成し使用します。 ただ、最近ではループを曲げなくてもいいように歯に接着するブラケットに様々な工夫がなされている(ストレートエッジワイズブラケット)ため3個以上のループを屈曲することは少なくなりました。
アーチターレットを手にすると、卒業直後の研修医時代を思い出して懐かしい感じがします。このアーチターレット、私はてっきり「一生もの」だと思っていたのですが15年経ったあたりから少しずつトルク値がおかしくなってきました。トルクが10度入る溝にワイヤーを挿入しても規定値通りに曲がらないんです。繰り返しの使用によりどうやら溝が削れて広がってきているみたいです。10度のはずが15度曲がったりします。
ということで買い換えました。最近は使う機会も少ないし15年以上頑張ってくれることでしょう。
アーチターレットといえば、、、2年程前に舌側矯正専用のアーチターレットが発売されました。その数年前から知り合いの業者さんに こんなの作ってって伝えていたのに却下されていたんですよね。
他の道具でも似たようなことがありました。デザインして業者さんにこれ検討してもらえないかな?って伝えた3か月後位に他メーカーからほぼ同じ商品が発売されたりとか。皆考えることは似たり寄ったりだとも言えますがやっぱり悔しい。そこで、今試作品を試している製品は是非とも他社に先駆けられず販売したいですね。