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奥歯を後ろに動かしたら鼻の下の骨が盛り上がってきたというご質問
患者様からのご質問
私は別の医院でインビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正装置)をしています。前歯を引っ込めたくて始めました。
非抜歯で奥に歯をずらしていっています。今10個めのアライナーですが、鼻の下の骨(鼻の穴の下の骨)が盛り上がって前に出てきました。これはめずらしくない事ですか?
当院からのお答え
今回は実際の当院からご質問者様へのお答えは割愛して少し補足しながら説明してみたいと思います。
どのような矯正装置を使用するにせよ、歯の移動には必ず反作用が生じます。
手で壁を押せばその反作用で手が押されます。
引用)Dr.あゆみの物理教室
歯の移動も同じことで、奥歯を後ろに押せば、その反作用として前に押す力がどこかに生じています。
同一の歯列内で奥歯を後ろに押す反作用を負担する部分は前歯ということになります。矯正歯科ではこの反作用を負担する部分(あるいは矯正装置)のことを固定源といいます。上図では「人」=「固定源」です。
ご質問者様の「鼻の下の骨(鼻の穴の下の骨)が盛り上がって前に出てきました」というのはこの前歯に作用した前向きの反作用が、前歯の前方移動を介して歯槽骨形態の変化を引き起こした結果と考えられます。ご質問者様はインビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正装置)を使用しているとのことですが、どのような矯正装置を使用していても奥歯を後方移動するための固定源を前歯に求めれば同じ結果になります。
奥歯を後ろに動かしてから前歯を後ろに動かせばいいのでは?と思うかもしれませんがそれもダメです。なぜなら今度は前歯を後方に引っ張る力の反作用が奥歯を手前に引っ張る力として作用するからです。
左の椅子の人が奥歯、右の人を前歯としましょう。最初は前歯を固定源にして奥歯を後方に押しますが(赤矢印)反作用(黄色矢印)で前歯も前方に移動します。
その結果、奥歯も後方に移動しますが前歯も前方に移動してしまいます。ご質問者様はこの状況だと思われます。
次に後ろに動かした奥歯から前歯を引っ張るとどうなるでしょうか。
今度は前歯は後方に移動しますが、反作用で奥歯が手前に移動してしまいます。結局、元の位置に戻ります。
同一歯列内で歯の移動を行う場合にはこのような移動形式になります。では、奥歯を後方移動することは不可能なのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。これまでの例では同一歯列内に固定源を設定しましたが、固定源を同一歯列の外に設定するか、固定源となる矯正装置を追加で使用すれば奥歯を後方に移動することが可能になります。
1・固定源を対合歯列に設定する(例:上顎の奥歯を後方移動するために下顎の歯列を固定源として設定する。顎間ゴムを利用して下顎歯列全体を固定源とする方法です)
2・歯科矯正用アンカースクリューを使用する
3・顎外固定装置(ヘッドギアー等)を使用する
この3つのいずれか、あるいは複数を併用することで前歯の前方移動を防ぎながら奥歯を後方に移動することが可能になります。
一例として歯科矯正用アンカースクリューを使用して奥歯を後方移動したケースを紹介します。
治療前です。写真中に黄色線で示しているのは上下顎の第一大臼歯の位置になります。治療前は前後的にほぼ同じ位置にあります。
奥歯の後方移動終了時です。アンカースクリューを固定源として後方移動を行ったために、上顎の黄色線が下顎の黄色線より後方に移動していますが前歯の位置は治療前と変化ありません。奥歯が後方に移動したので、犬歯後方には隙間が生じています。このような方法で奥歯を後方移動すれば前歯に前方への力が作用することはありません。
患者様の中には矯正治療中、歯肉や歯槽骨の形態に変化はないと思われている方も少なくありませんが、実際には歯の移動に伴い歯肉形態も、歯槽骨形態も変化します。
ご質問者様の場合は、奥歯の後方移動の反作用によって前歯が前方に移動し、それに付随して歯槽骨が頬側に盛り上がってきたものと思われます。
使用装置がインビザラインということでおそらく固定源としては下顎の歯列全体を設定し、顎間ゴムとの併用が計画されていたと思われますが、顎間ゴムの使用時間が短かったなど、なんらかの理由で固定源が機能しなかったと考えられます。
ただ、ご質問者様の主訴が「前歯を引っ込めたくて」ということですから抜歯という選択肢もあったのではないかという気もします。
*このページは実際に患者様からメールで頂いたご質問に対する当院のお返事(あるいはホームページ用に編集した内容)を中心に記載しております。そのため、患者様からの質問内容については年齢、性別、文章の特徴等、Q&A形式で考えて問題ない範囲でデフォルメして記載しております。また、内容的にも理解が得られやすいよう適宜解説を追加して記載しておりますのでご了承ください。
治療の目安
- 主訴
- 前歯の凸凹
- 診断名
- 叢生
- 年齢
- 32歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- 唇側矯正装置、歯科矯正用アンカースクリュー
- 抜歯部位
- 非抜歯
- 治療期間
- 24か月 / 月に約1回の通院
- (掲載した症例写真以降の治療に係る期間も含みます)
- 治療費
- 920,000円(税込)
- (掲載した症例写真以降の治療に係る費用も含みます)
- リスクと副作用
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- 簡単な手術ですが、抗生物質と痛み止めを服用していただきます。患者様の多くは術直後に1度痛み止めを服用します。
- 稀にインプラントが固定されず、植立し直す場合があります。