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一歳女児の受け口についてのご質問
患者様からのご質問
1歳の女児の受け口についての質問です。乳歯が上の前歯4本、下の前歯4本生えておりますが受け口です。祖父が受け口のため遺伝してしまったようです。何としても治してあげたいと考えております。
インターネットでは3歳から「ムーシールド」という矯正装置で治療が可能であるとありますが、今すぐにでも治療できるものはあるのでしょうか?
近くの歯科医院に相談に行きましたが、その際に上の歯が前に出るよう、一日10回程引っ張ってみてくださいと説明を受け、毎日欠かさず続けておりますが、このほかにできる治療はありますか?
当院からのお返事
歯列矯正用咬合誘導装置「ムーシールド」ですが、さすがに1歳ですと装置を外してしまうので使用することが困難です。1歳のお子様を対象にした矯正装置というものもありませんし、受け口の治療は3歳くらいからでも十分間に合いますから心配する必要はありません。
また、上の歯を引っ張る方法についてもお子様が嫌がっているようなら無理にする必要もないように思います。
矯正治療は持続的な力を働かせることが大切で、1日8時間は力を作用させないと歯の移動は起こらない(作用させない16時間の間に元に戻ってしまいます)ので、非常に軽微な受け口といいますか、上の前歯と下の前歯が重なって、受け口になるか正常になるか紙一重というような状況であればあるいは受け口が治ることもあるかもしれませんが一般的な方法とは言い難いです。
治療は
1・3歳くらいになったら検査をして骨格性の受け口なのか、歯の傾きによる受け口(歯性)なのかを見極めます。
2・骨格的な要因の強い受け口であれば治療を検討しますし、歯の傾きによる受け口であれば永久歯の萌出に伴い自然治癒する可能性もあるので経過を観察します。
いずれにしてもあまり小さい時から無利失理矯正をするというのは精神衛生上与えるデメリットのほうが大きくなりますから、お子様の様子を見ながら徐々に慣れていってもらうという方法をとります。
骨格性の受け口と歯性の受け口の簡易的な鑑別方法(乳歯列)
骨格性の受け口か、歯性の受け口かについて正確にはレントゲンで上下顎骨の大きさを測定して判定しますが、視診で簡易的に判断する方法がありますのでご紹介します。
下図は標準的な乳歯列の模式図です。上下顎の第二乳臼歯(E)後縁が垂直な関係です。
次に骨格性の受け口の場合には下図のようになります。下顎の第二乳臼歯後縁が上顎に対して前方に位置しています。2㎜程度のずれであれば問題ないことも多いですが3㎜を超えて前方に位置しているようなら骨格的な要因が強いことが示唆されます。
歯性の受け口の場合には第二乳臼歯後縁の位置関係は標準的ですが前歯の傾きによって受け口になります。
1歳児の受け口について
1歳ではどんな矯正装置であれ使えないです。受け口の治療は骨格的なケースでも3歳からと考えていいと思います。3歳でも半分くらいのお子様は歯型を取ることができずに治療を開始することができません。歯型を取れない理由は「泣いたり」「口を開けてくれなかったり」等の理由です。最初から無理やりやっても仕方がないので半年おきにやってみたりします。
5歳くらいになればなんとか多くのお子様が歯型を採れるようになりますが、過去に虫歯治療で嫌な思いをしていたりすると難しいこともあります。ですから一概に何歳になったら治療を開始できますとはいえないのです。
一方で、一般論としては骨格的な下顎前突症は早期治療が望ましい症状でもあります。可能ならば3歳から治療を始めたいところではありますが、兼ね合いが難しいところです。
*このページは実際に患者様からメールで頂いたご質問に対する当院のお返事を中心に記載しております。そのため、患者様からの質問内容については年齢、性別、文章の特徴等、Q&A形式で考えて問題ない範囲でデフォルメして記載しております。また、内容的にも理解が得られやすいよう適宜追加して記載しておりますのでご了承ください。