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前歯が大きいのが気になるのですが、削ることはできますか?
前歯が大きく見えることに対する対処法
前歯が大きいと訴える患者様のほとんどが上顎の前歯、特に上顎左右の中切歯の大きさを気にしています。患者様が歯が大きいと感じる理由は絶対値が大きい場合と、相対的に大きく見える場合があります
1・歯の絶対値が大きい
上顎中切歯の平均的な大きさ(幅径)は男性で8.6mm、女性で8.5mm前後です。このため9mmを大きく超えてくると大きいと判断できると思います。
2・相対的に歯が大きい
中切歯の大きさは平均的なのに、何らかの理由で相対的に大きく見えることがあります。例として「側切歯の大きさが平均よりも小さいために平均的な大きさの中切歯が相対的に大きく見える」、「側切歯が舌側に位置している(≒中切歯が突出している)ために相対的に中切歯が大きく見える」などが挙げられます。
実際には「歯の絶対値が大きい」ことよりも「相対的に中切歯が大きく見えている」ことのほうが圧倒的に多いです。
「絶対的に歯が大きい」ことへの対処法
これは歯を削る、以外に有りません。といっても仮に9.5mmある大きな中切歯でも左右を各0.5mm程度削るだけでほぼ平均的な大きさになりますから削ることによって歯が沁みるといった心配はありません。
ただ、このような方法で歯を平均的な大きさにしたとしても、歯を削ることによってできた隙間を閉鎖しないと“すきっ歯=空隙歯列”になってしまいますから矯正治療によって隙間を閉鎖する必要があります。
「相対的に歯が大きく見える」ことへの対処法
1・矯正治療によって歯列を整える
2・中切歯を小さな側切歯に合わせて削る
3・小さな側切歯を平均的な大きさに形態修正する
上記の順序は臨床的な対処の順序でもありますが、多くの場合「1・矯正治療によって歯列を整える」ことで問題は解決してしまいます。 実例を挙げます。
矯正治療前
矯正治療後
上の症例は中切歯の大きさは平均的ですが「側切歯が平均よりも小さい」ことと「中切歯と側切歯の“垂直的な段差”が大きい」ことで相対的に中切歯が大きく見えていました。
上顎の部分矯正治療ですが治療前後を比較していかがでしょうか?歯を削る、形態修正するなどの処置は行っておらず、矯正治療によって歯の配列を整えただけですが中切歯の大きさが小さくなったように見えると思います。
もう一つ、このような症例で往々にして患者様が訴えることが、左右の中切歯を削って小さくできないか?ということです。イメージは以下の写真です。
写真の黄色い部分を削って欲しいと希望される方が実に多いのです。ただ、これはお勧めできません。理由は「歯の縦横比が変化して不自然になる」、「これだけ歯を削るとほほ確実に歯の神経を抜くことになる=差し歯になる」、「天然歯の持つ自然の色合いが台無しになる」からです。
歯は多くの患者様が想像しているような単一色ではありません。白を基調として歯の厚みの差(先端ほど薄くなる)や光の透過具合によって複雑なグラデーションがあります。差し歯を作る場合、できる限りこの色調を再現するように作成するのですが、差し歯は多くの場合、強度と精度の問題もあって金属を裏打ちとします。そうなると光の透過はほぼゼロになりますから完全に天然歯の色調を再現することは困難なのです。虫歯などの理由でやむを得ずという理由ならともかくわざわざ天然歯を削ってまで差し歯にする理由は見当たりません。
治療の目安
- 主訴
- 前歯が大きいのが気になる
- 診断名
- 叢生
- 年齢
- 29歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- マルチブラケット装置
- 抜歯部位
- 非抜歯
- 治療期間
- 10か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 唇側矯正治療(上顎の部分矯正) 約430,000円(税込)
- リスクと副作用
-
- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
もう1つ症例を挙げます
矯正治療前
矯正治療後
(本症例の詳細は“Case44:上下顎前突2”へ)
この症例は“左右の側切歯が中切歯に比較して舌側に位置している”ために相対的に中切歯が大きく見えていました。このケースも歯を削ったり、形態を修正したりという処置は行っていませんが、印象はかなり異なるのではないでしょうか。
先ほど「相対的に歯が大きく見える」ことへの対処法として「1・矯正治療によって歯列を整える」「2・中切歯を小さな側切歯に合わせて削る」「3・小さな側切歯を平均的な大きさに形態修正する」を挙げましたが、上記2症例は 「1・矯正治療によって歯列を整える」だけで改善しました。
もしこれでも前歯が大きいと感じる場合にのみ「2・中切歯を小さな側切歯に合わせて削る」もしくは「3・小さな側切歯を平均的な大きさに形態修正する」という方法を考慮することになりますが実際にそのような処置を必要とするケースはそれほど多くありません。
治療の目安
- 主訴
- デコボコの歯並び、口元の突出
- 診断名
- 上下顎前突+叢生
- 年齢
- 19歳 女性
- 治療に用いた主な装置
- マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
- 抜歯部位
- 上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯
- 治療期間
- 2年3か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 大人 唇側矯正治療 約920,000円(税込)
- リスクと副作用
-
- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。