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歯科器材の製作
SNLD1、2
今回は治療とは全く関係ありません。道具を製品化するのってこんなに大変(というか時間がかかるもの)なのね、っていう話。
4年前くらいでしょうか。舌側矯正治療をやっていて、こんな道具があったらいいな~と感じたのは。
とはいっても自作することもできないので日頃あれやこれやお世話になっている矯正歯科器材商社ロッキーマウンテンモリタのMさんに話を持ちかけてみました。
初めてですし、別になくても現状どうにかなってはいるわけで「こんなのあったら売れると思うんだけど、作れないかな?」って感じでした。その場でそのMさんとデザインの荒書(本当に幼稚園児レベルのデッサンですw)をしてその場は終わりました。
その後はMさんが来たときにたまに思い出して「そういえばあれどうなった?」とか聞いていたのですがなかなか進んでいるようには感じません。
どうやら話がアメリカの会社にいっちゃった感じ?よく分かりませんが日本国内で作る様子ではないのでこうなるとアメリカ人(決して英語ではないですよ!w)が苦手な私にはお手上げです。
一方であの酷いデッサンが異国に渡り、製品化の可否について真剣に議論されていることに驚いたというか、こんなことならもうちょっと真面目にデッサンも描くべきだったと後悔したりしました。結局、Hu-Friedyという歯科業界では大手のメーカーが手掛けてくれることになったようです。ありがたい話ですが、こうなるともう自分の手を離れてしまいますね。
1年くらいして試作品が出来上がってきました。個人的にはこれでいいんじゃない??と思いましたが、そこはやはりメーカーですから売れるか売れないか、やはりそこが重要なようで、試作品を使ってマーケティングをしているらしいことがMさんの言葉から感じ取れます。聞いてみると試作品を10人位(?)の先生に試用してもらっているようですが、どこで開業しているどの先生が使ってくれているのかまでははっきりと教えてくれません。
今思えばマーケティングの精度に影響が生じることを懸念したのでしょうか??とにかく、製品のアイデア自体に自信は有ったのですが、多くの先生の意見を取り込んでいくとなると、当初自分が想定していた製品と似て非なる物が出来てきてしまうのではないか?それがちょっと不安ではありました。最終的に製品化を決定するのはHu-Friedyですから。
結果的にはほとんど自分のイメージ通りの物(SNLD1)が出来上がりましたが、自分の発案ではないサイズの物(SNLD2)との2パターンが商品化されることになりました。
自分のイメージ通りなのはSNLD1のほうで、SNLD2のほうは同じ形ですがサイズ(写真じゃ判らないというか、矯正歯科医でも実際に使わないと判らないかも)が違います。
最初のプロトタイプが出来上がるまでに1年、それに改良を加えたプロトタイプ2が出来上がるまでにさらに1年、商品版ができるのにさらに1年、都合3年の歳月がかかりました。もう、依頼した自分自身が依頼したことを忘れてしまうくらいに長い・・・。
さらにさらに、ロッキーマウンテンモリタが販売に本腰を入れたのが完成版ができてから半年後の今月です。
写真は初めて商品がロッキーマウンテン社のパンフレットに掲載されたときのSNディレクターですが・・・、いきなり安売りされてますw
商品名も最初は自分の名前をとってshungoディレクターにしてくれとお願いしたのですがあえなく却下。やむをえずイニシャルを入れてもらってSNLD(SN lingual director)となりました。もっともSNがshungo nomuraのイニシャルだなんて世界中の誰も気が付かないんですけどね。自己満足。
(続編)
2016年春
Mさん突如来院す。だいたいこういう時は近隣の矯正歯科医院の訪問をメインに所沢に来ているに違いないのだ。近くに来たし、時間が余ったから寄ったろか、てなことに違いない。どーでもいいけど。
まあまあ、そうはいってもお世話になっていますし今日は何でしょ?
Mさん「SNLDですが・・・」
私「はあ」
Mさん「O社で売っても良いですか?」
・・・どこで売られようと俺には一銭たりとも入ってこないんだから良いも悪いもないだろが・・・
私「別に構わんけど」
Mさん「実はHu-Friedyの国内販売が当社からO社に代わることになりまして、当社でSNLDを販売することができなくなりました」
私「・・・・」
Mさん「せっかく先生と一緒に作ったのに他社に全部持って行かれるのは悔しいので国内で生産したいんですけどどうでしょう?」
私「いいんじゃない」
で、国内では大手のワイデムヤマウラという会社でSNLDのバッタモンを作ってもらうことになりました。基本的なデザインは全く一緒です。ワイデムの担当者から「角を少し丸くしたい」という要望があったそうなので、「で、あるか」と年相応の返事をしました。
私に決められるのは「商品名」と「柄の模様」です。SNLDそのものはHu-Friedyが製造を続けるし、販売はO社が担当するのでなくなるわけではないのです。ただ、ほぼ同一の商品が他社製で元の販売会社から製品化されるのですが、さすがに同じ製品名という訳にもいかないので新たに名前を考えろと。
国内生産だけに自由度はかなり上がりました。製品に刻印できる文字数の制限はあるものの基本的にどんな名前でも構わないとのこと。念願の「shungoディレクター」も大丈夫だったんですけど5年も経つと人間は変わるもの。今更恥ずかしくてそんなネーミングは無理。本当に5年前「shungoディレクター」が発売されなくて良かったと思う。当時はそんなに売れるわけないと高をくくっていたけど、わざわざ国内メーカーで製造するくらいだからそれなりに売れているんでしょう。
で、なんだったかな?なんか商品コードみたいな商品名になりました。
柄の模様は「桜」「キティ―」「デフォルト」の中から選ぶことになりました。Hu-Friedyのときは選択肢がなくて「デフォルト」のみ。で、今回は桜を選択しました。カタログにのたっとき目立つかな?と。写真の上が今回作成中のディレクター(試作品)、下がHu-fredyのもの。桜模様、どうですかね?
ところで海外では一体いくらで売られてんだろ??と思って検索してみたら・・・
55.32ユーロ。1ユーロ120円換算で6638円。最初の写真のトライアル価格6640円とのあまりの近似にビックリ。偶然だろうけど。