下顎前突治療例9(下顎両側第一小臼歯抜歯、唇側矯正装置)
症状・治療方針・治療
初診時年齢:24歳
性別:男性
主訴:前歯で咬めない
症状・治療方針
前歯部の反対咬合と開咬、凸凹(叢生)が認められます。また、上顎歯列正中に対して下顎歯列正中が左側に偏位しています。
反対咬合は前歯の傾きが原因であるもの(歯性)と上下顎骨の大きさの不調和が原因であるもの(骨格性)とに大別されますが、本症例は骨格性の反対咬合でした。
側方の咬み合わせをみると小臼歯1歯分、下顎歯列が上顎歯列に対して前方位にあり、矯正治療単独で治療を行うことができる限界の症状です。本症例においても患者様が下顎が出ているという顔貌の改善を希望される場合には外科手術を併用した矯正治療(外科矯正)も選択肢になりますが、口腔内所見から想像されるよりは顔貌所見が極端ではなかったことと、患者様が外科手術を希望されなかったため矯正治療単独で治療を行うことにしました。
下顎両側の第一小臼歯を抜歯し、抜歯スペースに下顎前歯を後退することで下顎前突の改善をはかることにしました。
治療について
骨格的な下顎前突症は上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の舌側傾斜を伴うことが多いです(歯性補償)。
このため、骨格的な下顎前突症を下顎小臼歯を抜歯して治療を行う場合には下顎前歯の過度な舌側傾斜をきたさないように注意する必要があります。本症例を振り返ってみると適切な下顎前歯の角度が維持されております。また、先に矯正治療単独の限界症例ということに触れましたが、患者様の協力(顎間ゴムなど)もあり、抜歯スペースのほぼ全てを下顎前歯の後退に利用することができました。
治療難易度は高かったですが、とても良い治療結果を得られたのではないかと思います。
治療の目安
- 主訴
- 前歯で咬めない
- 診断名
- 開咬と叢生を伴う骨格性下顎前突症
- 年齢
- 24歳 男性
- 治療に用いた主な装置
- 唇側矯正装置、顎間ゴム
- 抜歯部位
- 下顎両側第一小臼歯
- 治療期間
- 25か月 / 月に約1回の通院
- 治療費
- 約820,000円(税込)
- リスクと副作用
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- 治療中は歯みがきしにくい箇所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるので、念入りな歯みがきが必要になります。
- 初めて矯正装置を装着した時や調整した後は、疼痛や圧迫感などを感じることがあります。
- また、治療当初は装置が舌にあたり、発音のしづらさや食べづらさなど感じることがあります。
- 歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
- 歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こることがあります。
- 矯正治療は患者様の協力度に左右されることのある治療です。顎間ゴムなどを歯科医師の指示通りに使用しないと期待した治療結果が得られないことがあります。